一般向けの案内文書です。
当職への相談にあたって、先にご一読いただけましたら幸いです。
1 はじめに
医療事故の法的紛争では,患者の状態に応じて,その場そのときに,医師がすべきでないことをしたこと,またはすべきことをしなかったことについて,後遺障害・死亡等の結果に対する法的な関連性(相当因果関係といいます)があるのかどうかを逐一争います。そのような関係にない苦情は法的問題としては扱えません(道義上の問題です)。たとえば,レストランに対して料理が自分の口に合わなかったから金を返せという文句は法的問題ではないけれども、料理がどれだけ美味しかったとしても、衛生管理が悪くて食中毒になったら法的問題になります。
医療行為でいうと,説明や対応がまずいという「だけ」では法的問題にならず,それによって副作用・副反応・合併症の通常許容される範囲を超えて何らかの実害が出てはじめて法的に損害賠償の問題になります。しかも、医療行為の場合、一般には患者は何らかの疾患がある状態なので、医療行為に問題がなくてもそれが悪化することがあるので、そうでないことの立証も必要となります。
以上のとおり、医療事故を解決するための考え方としては、まず,患者の状態が問題の時点でどうであったかという点を確認し、次に,医師の義務とその義務違反行為の有無を検討し、どの程度の損害結果が関連性を持つのかを判断するという流れになります。それらは、いずれの点でも患者側が立証の責任を負うので,裏付けとなる証拠資料があるかどうか,主張を立証できるかどうかが重要です。
医療相談の一般的な流れ
相談 > 調査 > 交渉 > 法的手続 > 賠償の獲得
2 相談から相手への請求まで
前記の通り、相手医療者に法的責任があるかどうかは、証拠資料を元に慎重に判断する必要があり、そのために、民事訴訟の提訴に匹敵する程度・内容の証拠資料による事前検討を要します。
従って、相手医療者がミスを自認して賠償額を具体的に提示しているなどの例外的な場合を除き、相手医療者が有責の可能性が高いという確信が得られない限り交渉自体を開始しません。
そのため、当職は、受任のレベルを3段階に分け、次の段階への見通しがない場合にはその先の受任をお断りしています。
- レベル1 相談
医療事故として調査をするかどうかを簡易判定するための相談です。前記の通り、これだけですぐに交渉を開始することは、ほとんどありません。
電話相談は1回30分を超えない限り何度でも無料です(通話料はご負担ください。また、当職の繁忙状況により応対できない場合や、中断する場合もありますことをご承知おきください)。
面談・30分以上の電話の場合は、30分毎5000円で、メール相談は1往復5000円です(消費税別)。
相談を受けて、相手医療者に法的責任があるかどうかの判定のための資料が不足していると判断したときは、それらを当事者で集めて頂くか、弁護士に依頼するかを決めていただきます。
- レベル2 調査
弁護士が医療事故として相手医療者の法的責任を問える可能性がどの程度あるかを検討するための証拠収集、検討の活動です。
費用は、弁護士費用(手数料)が10~20万円(事案の内容や法テラス利用の有無などで変わります)、専門医からの意見聴取費用が5~20万円で、最低でも20万円程度が必要です。
収集した資料を検討し、医療者の法的責任についての意見書をまとめて報告するまでの業務となります。
この段階で、相手医療者に法的責任がないと判断された場合は次のステップには進みません。
法的責任に確証を得られるケースはほとんどありませんが、一応の責任追及可能性がある場合には、責任や損害の大小に応じて、交渉限り・ADR・民事調停・民事訴訟のいずれかの手段を次に検討することになります。
- レベル3 交渉等の開始
- 交渉限り 勝訴可能性が少ないと判断された場合、いわばダメ元で相手への請求だけをする方法です。相手が拒否回答をした場合は原則として交渉終了です。弁護士費用着手金20万円(法テラス利用の場合は調査・交渉の合算で10万円程度の着手金になります)
- ADR 勝訴可能性が少ないが、相手になんらかのインパクトを与えたい場合に使う民間調停の方法です。相手が話し合いに応じない場合は原則として事案断念となります。交渉の弁護士費用+追加10万円(弁護士を通さず本人か親族代理人が手続すれば実費1万円です。)
- 民事調停・訴訟 勝訴可能性があり、費用対効果的に問題がない場合の最終手段です。弁護士費用は請求する金額に応じた額になります。目安としては着手金が請求額の10-15%程度(但し、最低額30万円)、報酬金が実際に回収した金額に応じた額(回収額の20%程度)です。
専門医の意見書取得(私的鑑定)や裁判所鑑定などのために、別途20~100万円程度の費用が必要になる場合もあります。
一般的には,治療費・医薬品代などの実支出額のほか,通院交通費,装具・器具などの医療関係費、入通院慰謝料、休業損害、後遺障害慰謝料が主たる請求内容となります。
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