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「労働者」とはなにか

 これもまた一般用語と法律概念とがストレートに結びつかない例の一つですが、基本的な考え方として、法律上「労働者」とは、「使用者」の「指揮監督に服し」て働き「賃金の支払いを受ける」人のこととされています。
 どうしてこのような定義が必要かというと、「労働者」であれば、労働法による保護(労働時間や休日、最低賃金、労災補償など)が原則適用され、「労働者でない」ならば労働法の保護は原則適用されないからです。
 会社(使用者)側からすれば、従業員が労働者でなければ、残業代も払わないでよいし、休日出勤も無制限で、賃金の規制もなく、労災保険料も払わないで済むという、非常に都合の良いことになります。そのため、質の悪い会社は、なんとかして会社の負担を減らそうと、いろいろな「工夫(脱法行為)」を試みてきました。
 例えば、以前話題になった「偽装請負・偽装派遣」などはその一種ですし、完全歩合制の代理店制度や、個人営業者への「業務委託」などの方法も、脱法行為に使われます。
 しかし、どのような脱法的な仕組を作っても、結局は「使用者の指揮監督に服し」「賃金を支払う」という二つの要素から、実際上の取扱をみて裁判所が判断しますので、上記のような労働法の適用を逃れようとする努力は、たいていの場合「無効」になります。
 裁判例によると、(1)指揮監督関係があること、(2)報酬が労務の対価として払われていること、(3)業務経費の負担、専属性の程度、服務規律の有無、租税公課の負担などの付随的要素、の3つをそれぞれの事案に応じて判断されています。
 要するに、会社で使っている個人が「労働者でない」といえるためには、その個人が会社の指揮命令に従う義務がなく(取引や労務を拒否したり、裁量で変更する自由がある)、報酬が時間給や日給ではなくて、業務成果に応じたもの(請負)になっているなど、完全に「自営業者」の実態がないとダメということです。
 人件費をはじめとする経費節減は、適法行為の範囲内で考えるようにしましょう。


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