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Category: 企業法務

  • 個人情報保護方針改訂

    2022年4月1日から改正個人情報保護法が施行になります。 各事業者は改正情報を参照して、必要な対応をご確認ください。 個人情報保護委員会 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/kaiseihogohou/ 特に改正法関連ではありませんが、当職の保護方針も改訂しておりますので、必要があれば、下記リンクからご参照ください。 当職の個人情報保護方針

  • リンク集の更新

    しばらく放置していたリンクを年末に整理しました。 分類項目を増やしてリストを短くしました。 おすすめリンク、あるいは、お勧めできないリンク などのご提案がありましたら、気兼ねなくコメントをいただけましたら幸いです。

  • 債権の管理回収の話(3) 仮契約、オプション

    1-3 オプション条項 一方的意思表示により当該契約に基づく履行請求ができる条項を「オプション」と言います。 オプション条項は、将来的なリスクを回避するために、相応の危険費用をあらかじめ想定して、不確定さを織り込んだ契約とすることができる点で、履行の柔軟さと契約の明確さを両立できる手法といえます。 ただ、一般の契約にオプション条項を設けることは、双方にとって大きなリスクを含むこととなりますので、権利行使条件や期限などは、あいまいにしないで、一義的に取り決めておく必要があるため、商取引の実際上の応用は利害関係があまり対立しない親子会社・グループ会社間のリスクヘッジ取引に限られてくるだろうと思われます。

  • 債権の管理回収の話(2) 新規取引

    (3)新規取引先への依頼・権限の確認  新しい取引先の開拓にあたっても、紛争予防のために交渉経過の文書化が重要です。  まず、連絡文書の宛先から注意を払いましょう。基本的には、その取引について、「権限」を持つ人物と、直接やり取りをすることが原則です。  そうでないと、後になって、上司や社長が出てきて、「そんな話は聞いていない」「承諾した覚えがない」「部下が勝手にやった」などの言い訳を招きます。  少なくとも、交渉の核心部分に迫り、重要な決定をする時点では、きちんと相手方の権限を確かめる必要があります。  当方も、文書発出の責任の所在を必ず明記するようにして、相手方に対して、社内的にどのレベルの人物が話をしているかを、知らせる必要があります。  初めから決裁権者を表に出す必要はありませんが、決定権限のない担当者レベルでの文書であれば、そのことを文書上でも明示すべきです。  社員の作成する文書に、勝手に「社長」「部長」等の決済権限ある役職を意味する肩書を使わせないようにしましょう。 (4)取引条件の確認  契約は、勧誘>申込>承諾>成立>効果発生>履行 の順序で進んでいきます。  相手に資料や見積もりを要求する場合には、それが「注文(申込)」でないことが分かるように明示すべきです。  もし、相手に「申込」だと誤解させてしまうと、それに対する「承諾」があったとして、契約の成立を主張される危険性があります。  表現としては、「申込・発注については弊社検討の後、改めてご連絡致します。」などとするとよいでしょう。  また、契約前の資料提供は、ほとんどの場合無料での提供になるとは思いますが、業界慣行や会社の方針などで、有償提供する場合もあり得ますので、事前情報の提供が有償か無償か、どの範囲まで無償か等についてもあらかじめ確認しておくほうがよいでしょう。 (5)信用調査  一定の情報(商業登記・不動産登記、有価証券報告、経営監査報告、経営者情報等)は、有料・無料の別はありますが、比較的簡易に取得できます。  最近はWeb上に会社情報を公開している企業も増えています。ただし、第三者の審査を経ていない資料は、一般に信用性が低いので、評価は慎重にすべきです。  審査を経ていても、絶対に虚偽・誇張が含まれていないとまでは確定できませんので、いずれにしろ、一定のリスクは背負わざるを得ません。  取引の立場上、自社側が強い立ち位置にある場合には、相手が取引をしたいという欲求が強いうちに、積極的に財務情報等の資料提出を求めておくのも効果的でしょう。  その場合には、会計書類(貸借対照表、損益計算書)、税務申告書写し、直近決算期の試算表、所有不動産の全部事項証明などが対象として考えられます。  個人であれば、確定申告書控えや住民票記載事項証明、資産・負債一覧などが追加で考えられます。  逆に、自社側が弱い立ち位置にあるときは、あまり強気の資料提供を求めると、相手社から取引拒絶される可能性が高まります。  そのあたりは、営業利益と危険損失のバランスをよく考える必要があるでしょう。

  • 債権の管理回収の話(1) 契約交渉段階の基本

    1-1 契約交渉段階 (1)大前提  口約束でも原則として法的に有効な契約です(保証契約などの例外あり)。  しかし、重要なビジネスを口約束だけで進めることはとても危険です。それはなぜでしょう。  最大の理由は、後日の紛争に備えられないことです。口頭での表現は、文脈に応じた「解釈」の幅が広がりすぎる危険があります。もし、交渉全体を通じた録音がなければ、最悪の「言った・言わない」議論に陥り、相互に悪魔の証明が課されることになり、裁判紛争の場面では、立証責任を負うほうが不利な立場に置かれます。債権者は債権発生原因事実、債務者は債務消滅原因事実の立証責任を負う立場にあります。  債権の管理回収に際しては、大原則・大前提は、「文書化」です。契約交渉段階から、決済に至るまで、あらゆる局面で、判断の分岐点が後日トレースできるように、内部文書や対外的書面を目的に沿って整備しておく必要があります。 (2)文書の形式  法的観点から、文書で重要なポイントは、「原本性」「時期特定」「作成者確定」の3つです。  ①原本性とは、その文書以外に代替できるものがないという性質のことです。たとえば、人が署名捺印した文書は原本性が極めて高度な重要書類といえますが、それをコピーしたものは、原本による代替性があるものなので、証拠価値も落ちます。ですから、代替性のない文書は、滅失・棄損したり、無用に改変されないように、確実に保管・管理しておく必要があります。  ②時期特定とは、文書の表現がいつされたのか、わかるようにしておくことです。これをもっとも厳格に実行できるのは、紙ベース文書であれば、作成日付を記載したうえ、公証役場で確定日付の印を押してもらうことです。ただ、1件あたり700円もかかるので、どのような場合に確定日付をとっておくかは、リスクとコストの天秤で判断します。電子文書であれば、電子公証制度を使うことができますが、やはり費用は掛かります。もうすこし緩やかな証明力でよいのであれば、内容証明・配達証明・配達記録郵便の利用とか、ファックスや電子メールでの送信記録などが考えられます。  時期を特定する目的は、事実の変化を後日検証するためです。つまり、法的な紛争が起こった場合、常識的に考えて、A事実は必ずB事実の後に起こるという論理が成り立つならば、A事実とB事実の時間的な前後関係は、当事者にとって非常に重要な要素になります。  ③作成者確定とは、当該文書の作成者を明確にすることです。文書の表示内容は、誰かの意思に基づくものですが、誰が作成したのかわからない文書の内容の真正は、多くの場合、確かめようがないので、一般にその信用性は低いものとみられます。特に法律文書の場合、作成者が文書上に法的な意思を表現する権限を持たない場合、「意思表示の瑕疵(カシ・キズ)」につながる可能性があるため、作成者を明示することは絶対条件と言えます。  以上の3つの形式的な要件が整えば、ひとまず法的観点からの文書としての信用性・証拠能力は合格レベルにあるといえます。あとは、その文書に表示されている内容が、真実に基づいて、的確に表現されているかどうかによって、文書の証拠価値が定まります。

  • ドメイン名の不正取得

     平成13年に不正競争防止法が改正され、不正に利益を得ようとしたり、他人に損害を与える目的でドメインを取得・保有することが禁止されました。それまでは、実際にドメインを使っていない場合には不正競争にならなかったのですが、この改正により、ドメインを取得するだけで違法の扱いになりました。  ドメイン紛争は、社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が定めた紛争処理方針に従って、日本知的財産仲裁センターで裁定が行われます。  詳しい内容は、各センターのWebサイトをご参照ください。  ドメインの権利はあくまでもドメイン管理団体が認める範囲での名称の使用権であって、特許権や意匠権のように固有の排他的性質を持つものではないのですが、ドメインがネットワーク上で唯一無二の名称として、商標や商号と同じように使われる現実上、一定の財産的価値を認めて第三者による侵害からの保護を図ることになっているわけです。  これに関連して、以前「mp3.co.jp vs mp3.com」事件というのがありました。センター裁定では、jpのドメインをcomに移転するべしと決まったのですが、それに対して、jp側がcomの登録者に対して、不正競争防止法を主張しないように求めて日本で裁判を起こしたのです。この件について、「裁定が覆った」と評するものもありますが、裁判所が判断したのは、「不正競争防止法」該当性であって、裁定の結論そのものを無効にしたり、覆したりするものではありません。  センター紛争処理方針・手続規則によると、裁定から10日以内に提訴すれば、裁定の実施が保留される仕組みになっているのですが、裁定はすでに下っているので、ドメイン移転を防止するためには、改めて仲裁センターの判断を仰ぐ必要があります(おそらくその場合にはセンターが裁判所の判断に従うので、結論は同じになる可能性が高いと思われます)。  仲裁センター自身も、センターの判断と裁判所の判断が食い違う場合もあることを認めており、その場合の対応は、事案の集積によって当面は様子を見るという態度を取っているようです。このあたりのあいまいさはなんとも日本的だなあと思うところですが、幸い、その後はセンター判断と裁判所判断が逆転する事案は、現れていないようです。  ちなみに、ドメインに関しては、アジア系の詐欺グループが活動しており、ドメイン保護を口実にして、無用のドメインを登録させたり、ドメイン移転をほのめかしてコンサル料を請求したりするための、ダイレクトメールを送ってくるケースが世界中で広まっています。  ドメインに関するダイレクトメールはほぼ詐欺ですので、安易に返信したり、問い合わせをしたりしないように注意してください。

  • 秘密の流出と対策

     今回は秘密流出後の対策についてです。  一般的に、取り急ぎ実効性のある法的措置を取りたい場合に役立つのが、「仮処分」という方法です。  ずいぶん前になりますが、仮処分については一度解説したことがあります。重要なキーワードなので、再度説明します。  裁判所の判決は,確定して初めて,その効力が発生するのが原則です。「確定」とは、相手方がその裁判の結果を争う手段がないという状態に至ることです。  具体的には、裁判のなかで、「和解」をするとか、一審判決に対して、相手が控訴しないで2週間を経過するとか、いろいろなパターンがあります。そのため、相手が徹底的に争って来れば、最高裁まで事件が続き、確定まで最短でも2年くらいかかってしまうことがあります。  「仮処分」は,判決が確定する前の段階で,相手方が勝手に紛争の目的物を処分したり,価値を減らしたりするのを防いだり、現に侵害されている権利がそれ以上侵害されないようにするための措置を講じたりするために、裁判所に申し立てて、一定の命令を出してもらう法的手段です。  よく使う例としては、賃貸していた不動産の賃借人が賃料を払わないので,解除をして明渡を求めた場合に、賃借人が「占有屋」のような人物に不法占拠させて、追及を逃れようとするのを予防するために、「占有移転禁止仮処分」をするというものがあります。もし、この仮処分をしないままに、裁判を起こすと、裁判で勝って確定時に執行官を使って明け渡しをさせようとしても、その時点での占有者が裁判の相手と違っていた場合には、明渡を強制できません。これは、「賃借権」が、賃貸人と賃借人の間の約束であるためです。つまり、明渡の裁判は、賃借権者の地位に基づく権利行使なので、賃借人に対してしか効果がないのです。  ただし、不正競争の場面での「仮処分」は、上記「相手方特定機能」ではなく、「仮の満足」すなわち、不正な侵害をひとまず中止してもらうという機能を目的として申し立てをします。賃借権の場面でも、例えば、賃貸事務所が暴力団に占拠されているような不法性の明白なケースでは、このような「満足機能」を目的とした「断行仮処分」をすることがあります。  これまでに紹介した不正競争関連の裁判事例でも、「販売差し止め」や「商標使用禁止」を仮処分で申し立てた例があったと思いますが、そのような仮処分を執行することによって、時間の経過によって拡大する可能性がある損害を早い段階で食い止めることが可能となるわけです。  他方、仮処分の相手の側(「債務者」といいます)からみると、万一裁判で権利侵害でないという結論が出た場合には、仮処分のせいで販売機会を失ってしまう結果に対して、ある程度の損害の発生が考えられることになります。そこで、この両者の権利関係を調整するために、仮処分を申し立てた側(「債権者」といいます)は、債務者の損害を担保するために、「保証金」を供託しなければなりません。これは裁判で勝訴すれば戻ってきますが、万一敗訴して、債務者が担保の権利を行使すれば、債務者に取られてしまう可能性があります。  保証金の金額には、裁判所がおおよその目安になる基準を示していますが、前記の通り、保証金は債務者のための担保なので、債権者の権利がどれぐらい確実らしいかどうかで、上下に幅があります。前述の暴力団の事務所占拠などに対する仮処分では、数万円程度の保証金で決定が出ることもありますし、申立段階で債権者の権利が不確実と判断されれば、保証金は高額になり、そもそもいくら保証金を積んでも仮処分命令を出してもらえないこともあります。  どんな法的手段であれ、まず最重要であるのは、「事情を知らない第三者(裁判官)に、債権者としての主張内容が真実であろうと信じてもらえる程度の証拠資料」をきっちり集めておくことです。  そのためには、日常業務から、紛争予防のための記録化・証拠化を意識する必要があるといえます。

  • 営業の秘密管理に対する裁判例

     前回に続いて営業秘密の問題についてです。  今回の事案は、コンサートや各イベントの企画・制作等を業務とする会社での事件です。  全従業員は4人しかいない小さな会社で、うち2人(元従業員・アルバイト)が退職後、同業種で独立しました。  原告会社は、その行動に腹を立て、顧客リストや登録アルバイトのリストを不正に持ち出したとして、元従業員らを提訴し、損害賠償と顧客リスト等の使用差し止め、情報消去を請求しました。  裁判所が認定した管理状況は次のとおりです。  アルバイト登録リストは、ファイルの背表紙に「社外秘」と記載されて、扉のない書棚においてありました。しかし、従業員に対して秘密保持を求める就業規則はなく、秘密保持の誓約書等も作成されていませんでした。コピーの部数制限やコピー物の回収などの措置もとられていませんでした。  結果として、この裁判では、秘密として管理されていたとは言えないとして、訴えた側の会社が敗訴しました。  実は、秘密管理に対する裁判所の判断は、平成15年前後から、比較的厳格なものになってきていると言われています。  これは、自由経済社会の中では競業が基本的に肯定されるべきだという、規制緩和・自由経済の風潮が強く言われるようになってきた国際・国内の政治経済状況を反映したものとも考えられます。  裁判所は、世の中のことを見ていないようで、ちゃんと見ているような感じもあります。  鍵をかけ、コピーの回収もしっかりしていたとしても、情報を管理する立場の人物が情報を流出させることは、究極には防ぎようがありません。  信頼して会社の情報を取り扱わせていた担当者の裏切りに遭うのは、会社としてもつらいことです。  小さな会社にあっては、信頼しているからこそ何も書面を交わしていないというのが実情と思われますが、上記の裁判例のように、客観的に秘密管理状況がないというだけで、秘密保護をしないという判断をされてしまう危険がありますので、情報取扱い担当者に対する損害賠償等の実現のためには、秘密保持契約が必須ということになるわけです。  秘密管理に対する裁判所の見方がより客観性を求める方向にあることを考えると、秘密管理については、文書化が基本であろうと思います。

  • 営業秘密の判断

     今回は競争業者を意識した秘密管理の問題についてです。  多くの裁判例がありますが、要点は、対象となる資料・情報が(1)どの程度秘密として厳格に管理されていたか。(2)どれくらい有用であるか。(3)公知のものでないか。の3点です。  とある裁判例を見てみましょう。  事案は、墓石販売業者の元従業員が、①会社にある顧客名簿(電話帳から見込み客として抜粋したものも含む)、②取引のあった顧客情報の管理簿、③墓地使用契約書、④墓地来訪者名簿、⑤墓地・墓石の加工図、⑥墓石の原価表を、自ら設立した独立後の新会社に持ち込んで、その営業に使ったというものです。  裁判所(東京地裁)は、①~⑤全部について(1)秘密管理性と(2)有用性を認めました。しかし、⑤と⑥は墓石の外観と価格が載っているだけのものであり、すでに公知(社外の者でも容易に知りうる)と判断されました。この事案で、販売業者が得られた損害賠償金額は630万円でした。  個別に要件を見ますと、 (1)秘密管理については、「テレアポ専用の部屋に、責任者が決められて、①と②は施錠可能なロッカー内に保存され、③と④は社員が日常業務で使う事務室内の営業課長の引き出し内に保管されていた。⑤は事務室内の書棚においてあり、⑥は営業課長の机の引き出しに保管されていた。会社は、営業資料を営業活動以外に使わないように指導を徹底していた」という状況でした。  本件以外の裁判例を見ると、このあたりの認定は、裁判所によって比較的判断が分かれやすいところですが、弁護士の感覚からすれば、この墓石事案は、その程度でも秘密管理性が認められる可能性があるというぎりぎりの案件かと思われます。  一般的には、専用の施錠可能な保管場所を決める。一定の役職者以外閲覧できないようにする。社外秘情報であることを明示する。等の措置が必要であり、鍵のかかっていない書棚においてあり、社員誰もがいつでも参照できるようなものは、事案によっては秘密管理性が否定される危険があります。また、それらの事実を後日に裁判上で立証するため、保管場所の整備や責任者の定め、文書・情報管理規定の作成、秘密保持契約など、客観的証拠を整備しておくほうがよいでしょう。 (2)有用性について、裁判所は、「①②には、継続的な営業(テレアポ含む)で得られた補足情報が含まれており、無差別に電話・訪問営業をするより効率的な営業が可能になる」「③④には関心を持って来訪した見込み客の情報が載っており、成約に至る可能性が高い顧客資料として有用である」「⑤⑥は①~④と比べるとそれほど有用とは言えないが、一応の有用性はある」と述べています。ただ、⑤⑥は結果的に公知と判断されており、端的に営業上有用な情報とまでは言えないとの判断もあり得たのではないかと思われます。 (3)公知・非公知を区別するには、営業に関連して社外の業者等にその資料を示す機会があるのかどうかという視点で見るとよいでしょう。加工図や原価表は、状況によっては加工業者や顧客に対して示す可能性もある資料ですし、上記事案でもそのようなものとして扱われていたのだと思われます。その場合には、当該加工業者や顧客との間でも、当該情報が秘密であること、その秘密は外部に出さないことについての了解がなければ、非公知だというのは難しいでしょう。  御社には営業上の秘密と思われる情報はおありでしょうか。この機会に情報管理について一度検証してみてはいかがでしょうか。

  • ありふれたものでもパッケージに凝ると

     今回は、商品化にあたって、法的観点からの対策も必要というお話です。  裁判例の事件は、子熊の絵が書かれたタオル類の販売案件です。  X社は、ベアーズクラブという名前で、子熊をモチーフにしたタオル類を籐籠に詰めて販売していました。そこへY社が違う子熊の図柄を使ったクロス製品のセット商品の販売を開始しました。  X社は、Y社商品が不正競争防止法違反(形態模倣)であるとして、提訴しました。  タオル類はユーザーの元でセットから外されて使用されるので、基本的には、セット全体としてではなく、個々の製品単位で模倣かどうかが判断されます。しかし、不正競争防止法は、先行者が行った企業努力に報いるために一定の範囲で独占的権利を保護する法律ですので、個々の商品がありふれたものであっても、セットやパッケージが凝っていて独創的なものであり、消費者がそのセットに着目して関心を引かれるものであれば、セット単位での法的保護を考える余地があります。  裁判所は、流通経路に出す時点でパッケージに創意工夫が凝らされているか(店頭ディスプレイでは足りない)、販売単位を調整するための単なるパック・小分けではなく、パッケージに消費者の関心を引く意味があるか、ばら売り販売を並行していないかどうか、組み合わせ内容がパックとしての特徴があり、ばら売りを適当に組み合わせただけではないかどうか、などを見て、セット商品として固有の取引形態であると認められるかどうかで判断すると言っています。  それだけの要素が満たされない限りは、セット商品として保護されることはありません。  他に問題になった事例としては、宅配寿司のセットの例があります。  これは、競合する宅配寿司業者が、他社の販売している商品のパッケージ・商品内容が自社のものを真似しているとして提訴した事件ですが、裁判所は、寿司の詰め合わせとしてありふれたものであるから、不正競争防止法では保護されないと判断しています。  前掲の例でもそうですが、単体としてありふれたもの(タオル、握りずし)は、それらを組み合わせて裁判所の認める独創性を出すことは非常に難しいと思われます。そこをクリアしていけるのは、いわゆるキャラクター商品くらいかもしれません。  これらの事案の教訓は、セット商品の開発に当たっては、いかに他社との差別化を図るかを十分検討し、差別化が難しいのであれば、その部分ではあえて勝負しないという選択をすることが必要ということです。  ありふれた製品について、独創性の要件をうまくクリアしたのが、いわゆる「ワイヤーブラシセット事件」です。  このケースでは、いわゆる百均ショップに卸す商品(ワイヤーブラシ)が問題となりました。  裁判所は、ワイヤーブラシそのものは、よくある普通の製品であって、保護対象にはならないと判断しましたが、当該商品の容器や包装に特徴があり、商品本体と一体化して消費者に独自の訴求をしていることを評価し、結論としては、一部について先行販売者の利益を保護しました。このように、ありふれたものでも、パッケージを工夫すれば、その努力が報われる場合もあるわけです。