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マンション居住者のための区分所有法・管理規約 超入門
マンションは自分の持ち物とみんなの持ち物との集合で成り立つ建物です。 自分の持ち物部分を「専有部分」といいます(法2条3項)。 みんなの持ち物(だれか一人の持ち物ではない)部分を「共用部分」といいます(法2条4項)。 この専有部分・共用部分は法律と規約で対象が定まる仕組みですが,複雑ですので今回の説明は,ひとまずこの程度に留めておきます。 各区分所有者は、自分のものかみんなのものかにかかわらず,「建物」にとって有害な行為や,管理・使用に関して,みんなの利益に反することをしたらだめというのがいちばん基本的な義務付けです(法6条1項)。 基本的なルールは区分所有法が決めていますが,多くの点で,必ずしも法律通りにする必要はなく,区分所有者が管理規約や使用細則を定めて,独自のルールで建物を管理運営していくことが可能です。 いろんなところでよく説明に出てくる「標準管理規約」は,国土交通省が管理規約のモデルを示したものであり,その通りにするかどうかは各管理組合の自由です。ときどき,標準管理規約が個別のマンションの管理規約より優先して適用されるというような誤解をしている方もおられますが,あくまでも,管理規約はそれぞれのマンションの自主ルールを定めたものですから,その内容が法律違反でない限り,それぞれのマンションの管理規約が適用されます。標準管理規約が改訂されても個々のマンション管理規約が変更されない限り,標準管理規約の変更がそのマンションに適用されることはありません。 最初に説明したように,マンションは自分のものとみんなのものとが入り組んでいますので,各区分所有者は,自分のものかみんなのものかにかかわらず,保存(維持・補修等)や改良(増設・改装等)のために必要であれば,ほかの区分所有者の専有部分や共用部分であっても,使わせてくれるように請求する権利があります。使わせてくれと頼まれた場合,それが保存・改良の必要によるのであれば,認めてあげなければいけません。ただし,ほかの区分所有者が,その使用によって損害を受けるときには,使用するものは補償金を払わねばなりません(法6条2項)。なお,これは使用そのものに関する損害のことですから,たとえば,保存改良工事の結果,逸水・ばい煙等が直接ほかの専有部分へ侵入するようになったなどのトラブルは,単に,加害・被害当事者間での不法行為問題であって,区分所有法の補償金とは別の問題です。 共用の廊下や階段はみんなの持ち物ですから,その用法(通路)に従って,みんなが自由に使えますが,専有部分ではないのですから,自分の居室の前や隣でほかの人の迷惑にならないからといって,廊下や階段に勝手に物を置いたり,機械を設置したりすることはできません(法13条)。 たとえば,専有部分につながるダクト(専有部分)の設置が問題になった場合,そのダクトが共用部分である廊下や階段を通過するのは,共用部分の通常の用法でない(通常は,専有部分のダクト設置工事のために廊下や階段があるのではない)のですから,共有部分に関する管理の問題として,原則として集会の通常決議による許諾を得なければなりません(18条1項)。規約で,理事会や理事長にこの権限が集約されているところでは,それらの規約に基づく手続きとなります。もし,ダクト専用の配管スペース(共用部分)があるマンションであれば,そのスペースはその用法どおりの使用ですので,技術的・事務手続的なことはともかく,法的には許諾が不要です。 管理費は,共用部分の管理のために管理者から各区分所有者に対して請求する費用です(法20条1項)。標準管理規約では,敷地の管理も目的に追加されており,管理費と修繕積立金とに分けて規定されています(規約25条1項)。 管理費は共用部分の維持管理費用に充てるために徴収されますから,管理費・修繕積立金を専有部分のために支出することは目的外支出であって,認められません。共用部分と連続して一体となっている専有部分の給排水管について,全体として清掃する必要がある場合に,専有部分に要する費用も管理費負担にしてかまわないという標準管理規約の取り扱い(規約21条2項)はありますが,専有部分の設備の「更新」は専有部分の区分所有者が負担すべきと解されています(規約第21条関係コメント(5)参照。さらに例外的場面として規約22条とそのコメント参照)。いずれにしろ,個々のマンションの管理規約がどうなっているのかが最重要のチェックポイントです。 管理費は一般的には専有部分床面積の割合に応じて負担額が決められていますが(法14条1項,規約25条2項,同14条),上記のとおり,共用部分の管理費用ですので,性質上、管理組合に対する債権と相殺できないと言われています(東京高裁平成9年10月15日判例時報1643号150頁)。たとえば,個人の負担で共用部分を補修して費用を支出した場合の立替金分は、管理組合の負担ではありますが、管理費と相殺することはできません。当然ながら、共用部分の瑕疵以外の原因(たとえば上階住民の漏水や隣家からの延焼等)によって専有部分の使用不能が生じても,管理組合に対する債権は生じませんから、そのことを根拠にして管理費を一方的に減額することはできません。 理事の不正などのために、管理費を理事に渡してしまったら目的外に流用されてしまうおそれがある場合、法的には、理事の職務停止と職務代行者選任を民事保全により実現したうえで、問題の解決まで管理費の収支を第三者(職務代行者)に取り扱ってもらうという方策はあり得ますが、時間・費用コストがかかるうえ、根本的な解決には集会の多数派を占める必要があるので、現実的でないかもしれません。 築年数の古いマンションは建物も居住者も高齢化が進み,あやふやな法律知識のもとに,でたらめな管理がされているというケースが散見されます。いわゆる管理会社にしても,専門知識があるのは一部の主任者だけで,営業社員は法律・規約には素人同然ということもよくあるようです。 理事者にしろ一居住者にしろ,判断に迷ったら,まずはきちんと管理規約を読み,それでもわからなければ,マンション管理士や弁護士に法的見解を確認すべきでしょう。
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事業承継と名称等の使用
1 事業支援の概要 他社の事業を支援するにあたっては,会社の新設,分割,合併,営業譲渡,出資,金融支援などの様々な手法があります。 それらの方法については,その時点での会社法制や税制などの状況や,関係先の状態に応じて臨機応変に判断しなければならないので,必要になった都度,検討をすることになります。今回は,それらの手法のことではなく,共通して問題となる「名称の使用」について整理してみました。 2 名称の種類 会社は,様々な名称を使っています。例えば,「社名」これは法人組織であれば,登記された名称(商号)であり、個人営業であっても商号登記が可能で、法的保護対象になります。 店舗経営会社の場合は,社名と経営する「店舗名」が違うこともあります。 また,代表的なサービスや商品の名称も会社名とは違う事があります。それらの表示は商標登録されている場合もあります。 事業支援を会社の新設,分割や営業譲渡の方法で実施する場合に,名称利用について注意すべき点が,大きく分けて二つあります。 一つが,「商号続用」で,もう一つが「ブランド,商品名続用」です。前者では会社法・商法が,後者では商標法その他の知的財産関連法が問題になり,共通の問題としては,不正競争防止法も問題になります。順に説明して参ります。 3 商号を続けて使う場合 この点については,商号を続けて使うことにより事業承継者に責任が生じるケースを裁判所が多数判断しております。 例えば、別会社の経営していた飲食店舗を譲り受けてそのままの名称で営業を続けていた会社が,もとの経営会社に対する債権者からの事業上の債権取り立てを受けていた事件で,店舗の名称を続けて使う場合には,対外的に反対の意思表示を明示していない限りは,会社法に基づいて,旧経営者の負債を弁済する義務を負うと判断された例があります。 このことから得られる教訓は,安易に支援先の事業を引き受けて,そのままの名称を使うべきではないということです。また,どうしても名称を続けて使いたい場合には,従来の取引先に対して十分な説明と周知を実施して,理解をえる必要があります。 4 ブランド・商品名を続けて使う場合 これは古くからの問題ですが,最近ではインターネット上のアドレス(URL)につく「ドメイン名」の不正使用という問題も加わりました。結局は,他人の権利を侵害してはいけないという単純な話なのですが,ブランドや商品名,ドメイン名は,よほど著明なものを除いて,一般的には誰に帰属する権利なのか,あまり周知されていません。誤って他人の権利を侵害してしまうことを避けるためには,登録商標やドメイン名などを,事前に調査する必要があります。 これらの知的財産に関する使用や登録のルールは,様々な国際条約,国内法,判例などが複雑に適用されますので,専門家(弁理士・弁護士)でないと扱いきれない問題になってきますが,会社が大きくなるとどうしても関わらざるを得ない分野です。 ちなみに、***管理士という国家資格は、次のものだけです(これ以外に ××管理士 という名称を付けているものはすべて民間の技能検定にすぎません)。 エネルギー管理士・熱管理士・電気管理士(エネルギーの使用の合理化に関する法律) 浄化槽管理士(浄化槽法) 安全管理士・衛生管理士(労働災害防止団体法) マンション管理士(マンションの管理の適正化の推進に関する法律) このほか国家資格ではないものの、「補償業務管理士」という資格があります。これは、公共用地補償に関する国の制度の中に位置づけられている点でやや特殊な民間資格です。 ・・・脱線しました・・・ 5 不正競争の問題 上記のような会社やサービス,商品等の名称が,世間に広まれば,それ自体が無形財産としての価値を持ちます。そのような営利会社がもつ対外的な無形的価値は会計上、「のれん(GoodWill)」として現れてきます。 このような性質があるだけに,多くの事業会社が、被害者になるケースと加害者になるケースの両方に遭遇してしまう可能性があります。 例えば,「sonybank」事件では,前記の「ドメイン」について,著名メーカーのソニー(sony)とは全く関係のない個人が,金銭的に多額の要求をする意図をもって,「sonybank」という名前をインターネットアドレスに登録していたケースです。最終的には裁判でソニーへの無償移転が相当と認められましたが,商取引での最近のインターネットの重要性を考えると,ソニーには相当な時間的,コスト的損害が発生したと思われます。 6 まとめ 以上,簡略化して説明しましたが,事業の拡大・展開や縮小・撤退過程では,さまざまな法律分野にかかわる問題がたくさん生じてきます。美しいテイクオフ・ランディングが出来るように,しっかりとした事前・事後の法務対策をすることが必要です。