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Category: 不動産問題

  • リンク集の更新

    しばらく放置していたリンクを年末に整理しました。 分類項目を増やしてリストを短くしました。 おすすめリンク、あるいは、お勧めできないリンク などのご提案がありましたら、気兼ねなくコメントをいただけましたら幸いです。

  • 秘密の流出と対策

     今回は秘密流出後の対策についてです。  一般的に、取り急ぎ実効性のある法的措置を取りたい場合に役立つのが、「仮処分」という方法です。  ずいぶん前になりますが、仮処分については一度解説したことがあります。重要なキーワードなので、再度説明します。  裁判所の判決は,確定して初めて,その効力が発生するのが原則です。「確定」とは、相手方がその裁判の結果を争う手段がないという状態に至ることです。  具体的には、裁判のなかで、「和解」をするとか、一審判決に対して、相手が控訴しないで2週間を経過するとか、いろいろなパターンがあります。そのため、相手が徹底的に争って来れば、最高裁まで事件が続き、確定まで最短でも2年くらいかかってしまうことがあります。  「仮処分」は,判決が確定する前の段階で,相手方が勝手に紛争の目的物を処分したり,価値を減らしたりするのを防いだり、現に侵害されている権利がそれ以上侵害されないようにするための措置を講じたりするために、裁判所に申し立てて、一定の命令を出してもらう法的手段です。  よく使う例としては、賃貸していた不動産の賃借人が賃料を払わないので,解除をして明渡を求めた場合に、賃借人が「占有屋」のような人物に不法占拠させて、追及を逃れようとするのを予防するために、「占有移転禁止仮処分」をするというものがあります。もし、この仮処分をしないままに、裁判を起こすと、裁判で勝って確定時に執行官を使って明け渡しをさせようとしても、その時点での占有者が裁判の相手と違っていた場合には、明渡を強制できません。これは、「賃借権」が、賃貸人と賃借人の間の約束であるためです。つまり、明渡の裁判は、賃借権者の地位に基づく権利行使なので、賃借人に対してしか効果がないのです。  ただし、不正競争の場面での「仮処分」は、上記「相手方特定機能」ではなく、「仮の満足」すなわち、不正な侵害をひとまず中止してもらうという機能を目的として申し立てをします。賃借権の場面でも、例えば、賃貸事務所が暴力団に占拠されているような不法性の明白なケースでは、このような「満足機能」を目的とした「断行仮処分」をすることがあります。  これまでに紹介した不正競争関連の裁判事例でも、「販売差し止め」や「商標使用禁止」を仮処分で申し立てた例があったと思いますが、そのような仮処分を執行することによって、時間の経過によって拡大する可能性がある損害を早い段階で食い止めることが可能となるわけです。  他方、仮処分の相手の側(「債務者」といいます)からみると、万一裁判で権利侵害でないという結論が出た場合には、仮処分のせいで販売機会を失ってしまう結果に対して、ある程度の損害の発生が考えられることになります。そこで、この両者の権利関係を調整するために、仮処分を申し立てた側(「債権者」といいます)は、債務者の損害を担保するために、「保証金」を供託しなければなりません。これは裁判で勝訴すれば戻ってきますが、万一敗訴して、債務者が担保の権利を行使すれば、債務者に取られてしまう可能性があります。  保証金の金額には、裁判所がおおよその目安になる基準を示していますが、前記の通り、保証金は債務者のための担保なので、債権者の権利がどれぐらい確実らしいかどうかで、上下に幅があります。前述の暴力団の事務所占拠などに対する仮処分では、数万円程度の保証金で決定が出ることもありますし、申立段階で債権者の権利が不確実と判断されれば、保証金は高額になり、そもそもいくら保証金を積んでも仮処分命令を出してもらえないこともあります。  どんな法的手段であれ、まず最重要であるのは、「事情を知らない第三者(裁判官)に、債権者としての主張内容が真実であろうと信じてもらえる程度の証拠資料」をきっちり集めておくことです。  そのためには、日常業務から、紛争予防のための記録化・証拠化を意識する必要があるといえます。

  • スパムメール警告 ドメイン・レジストラ関連

    この連休中、レジストラを名乗る「ygregistry.cn」から、変なメールが届きました。 Dear Manager, (If you are not the person who is in charge of this, please forward this to your CEO,Thanks) This email is from China domain name registration center, which mainly deal with the domain name registration and dispute internationally in China. We received an application from Huake Ltd on November 17, 2014. They…

  • マンション居住者のための区分所有法・管理規約 超入門

     マンションは自分の持ち物とみんなの持ち物との集合で成り立つ建物です。  自分の持ち物部分を「専有部分」といいます(法2条3項)。  みんなの持ち物(だれか一人の持ち物ではない)部分を「共用部分」といいます(法2条4項)。  この専有部分・共用部分は法律と規約で対象が定まる仕組みですが,複雑ですので今回の説明は,ひとまずこの程度に留めておきます。  各区分所有者は、自分のものかみんなのものかにかかわらず,「建物」にとって有害な行為や,管理・使用に関して,みんなの利益に反することをしたらだめというのがいちばん基本的な義務付けです(法6条1項)。  基本的なルールは区分所有法が決めていますが,多くの点で,必ずしも法律通りにする必要はなく,区分所有者が管理規約や使用細則を定めて,独自のルールで建物を管理運営していくことが可能です。  いろんなところでよく説明に出てくる「標準管理規約」は,国土交通省が管理規約のモデルを示したものであり,その通りにするかどうかは各管理組合の自由です。ときどき,標準管理規約が個別のマンションの管理規約より優先して適用されるというような誤解をしている方もおられますが,あくまでも,管理規約はそれぞれのマンションの自主ルールを定めたものですから,その内容が法律違反でない限り,それぞれのマンションの管理規約が適用されます。標準管理規約が改訂されても個々のマンション管理規約が変更されない限り,標準管理規約の変更がそのマンションに適用されることはありません。  最初に説明したように,マンションは自分のものとみんなのものとが入り組んでいますので,各区分所有者は,自分のものかみんなのものかにかかわらず,保存(維持・補修等)や改良(増設・改装等)のために必要であれば,ほかの区分所有者の専有部分や共用部分であっても,使わせてくれるように請求する権利があります。使わせてくれと頼まれた場合,それが保存・改良の必要によるのであれば,認めてあげなければいけません。ただし,ほかの区分所有者が,その使用によって損害を受けるときには,使用するものは補償金を払わねばなりません(法6条2項)。なお,これは使用そのものに関する損害のことですから,たとえば,保存改良工事の結果,逸水・ばい煙等が直接ほかの専有部分へ侵入するようになったなどのトラブルは,単に,加害・被害当事者間での不法行為問題であって,区分所有法の補償金とは別の問題です。  共用の廊下や階段はみんなの持ち物ですから,その用法(通路)に従って,みんなが自由に使えますが,専有部分ではないのですから,自分の居室の前や隣でほかの人の迷惑にならないからといって,廊下や階段に勝手に物を置いたり,機械を設置したりすることはできません(法13条)。  たとえば,専有部分につながるダクト(専有部分)の設置が問題になった場合,そのダクトが共用部分である廊下や階段を通過するのは,共用部分の通常の用法でない(通常は,専有部分のダクト設置工事のために廊下や階段があるのではない)のですから,共有部分に関する管理の問題として,原則として集会の通常決議による許諾を得なければなりません(18条1項)。規約で,理事会や理事長にこの権限が集約されているところでは,それらの規約に基づく手続きとなります。もし,ダクト専用の配管スペース(共用部分)があるマンションであれば,そのスペースはその用法どおりの使用ですので,技術的・事務手続的なことはともかく,法的には許諾が不要です。  管理費は,共用部分の管理のために管理者から各区分所有者に対して請求する費用です(法20条1項)。標準管理規約では,敷地の管理も目的に追加されており,管理費と修繕積立金とに分けて規定されています(規約25条1項)。  管理費は共用部分の維持管理費用に充てるために徴収されますから,管理費・修繕積立金を専有部分のために支出することは目的外支出であって,認められません。共用部分と連続して一体となっている専有部分の給排水管について,全体として清掃する必要がある場合に,専有部分に要する費用も管理費負担にしてかまわないという標準管理規約の取り扱い(規約21条2項)はありますが,専有部分の設備の「更新」は専有部分の区分所有者が負担すべきと解されています(規約第21条関係コメント(5)参照。さらに例外的場面として規約22条とそのコメント参照)。いずれにしろ,個々のマンションの管理規約がどうなっているのかが最重要のチェックポイントです。  管理費は一般的には専有部分床面積の割合に応じて負担額が決められていますが(法14条1項,規約25条2項,同14条),上記のとおり,共用部分の管理費用ですので,性質上、管理組合に対する債権と相殺できないと言われています(東京高裁平成9年10月15日判例時報1643号150頁)。たとえば,個人の負担で共用部分を補修して費用を支出した場合の立替金分は、管理組合の負担ではありますが、管理費と相殺することはできません。当然ながら、共用部分の瑕疵以外の原因(たとえば上階住民の漏水や隣家からの延焼等)によって専有部分の使用不能が生じても,管理組合に対する債権は生じませんから、そのことを根拠にして管理費を一方的に減額することはできません。  理事の不正などのために、管理費を理事に渡してしまったら目的外に流用されてしまうおそれがある場合、法的には、理事の職務停止と職務代行者選任を民事保全により実現したうえで、問題の解決まで管理費の収支を第三者(職務代行者)に取り扱ってもらうという方策はあり得ますが、時間・費用コストがかかるうえ、根本的な解決には集会の多数派を占める必要があるので、現実的でないかもしれません。  築年数の古いマンションは建物も居住者も高齢化が進み,あやふやな法律知識のもとに,でたらめな管理がされているというケースが散見されます。いわゆる管理会社にしても,専門知識があるのは一部の主任者だけで,営業社員は法律・規約には素人同然ということもよくあるようです。  理事者にしろ一居住者にしろ,判断に迷ったら,まずはきちんと管理規約を読み,それでもわからなければ,マンション管理士や弁護士に法的見解を確認すべきでしょう。

  • 住宅金融支援機構の金融商品・融資制度

     とある会議で、融資担当者の方からいろいろ話を聞けました。  金融商品については、「すまい・る債」があります。  管理組合の修繕積立金の保全は重要関心事ですが、対策としては、   1 ペイオフ対策として決済性預金にしたり複数の金融機関に普通預金を分散する。   2 元本割れの危険のない定期預金にする   3 安全性の高い国債・社債等に投資する  というのがおもなもので、このうちすまい・る債は3番のオプションということです。  10年満期で1年経過でいつでも解約できるそうです。  今回募集の利率は約0.4%で、民間金融機関より若干高めの感じです。  問題の安全性ですが、平成23年の総資産約33兆円で、発行債権総額が約13兆円ということですから、当面は問題ないレベルということでしょうか。S&P(スタンダードプアーズ)の発行体格付けでは、支援機構はAA-ということですので、投資証券としての安全性は比較的高いといえるでしょう。  融資担当者は、解約手数料かからないこと、債券を機構が無料で保管預かりすることをアピールしていました。  毎年1回の募集で、今年は10月11日締め切りだそうです。急げばまだ間に合いそうですね。  また、マンション向け融資制度もかなり使いやすそうです。  共用部分改修(長期修繕や耐震リフォームなど)のための融資制度です。  条件さえ満たせば、給排水工事のうち専用部分の枝管工事の費用も含んで融資してくれるそうです。  9月以降の金利は年1.3%で、マンション管理センターの保証料が0.5%かかりますが、それでも2%以内ですので、かなりリーズナブルといえるでしょう。  管理組合法人でなくても利用可能で、審査は通常約2週間程度、管理組合の決議と理事長実印があれば決裁出来ます。  おもしろいのは、60歳以上向けの返済特例制度です。普通の融資と違って、年齢制限が上向きに設定されているということです。  これは、いわゆるリバース・モーゲージではありませんが、融資元金は債務者が亡くなったときに一括返済すればよく、弁済は利息のみという取扱がされるものです。  たとえば、借りた人が亡くなったとき、保証人である高齢者住宅財団が代位弁済を実行し、相続人は、その家を相続して残元金を一括弁済するか、相続を放棄して、競売してもらうかを選びます。  相続したのに一括弁済ができない場合は、抵当権が実行され、相続人に残債務の支払い義務があることには注意が必要です。  また、元金部分の返済が猶予されるということは、高い金利を払い続けることになる可能性もあるということなので、そのあたりの判断は慎重にする必要があります。  くわしくは、住宅金融支援機構のサイトをご覧下さい。

  • 建築・開発と住環境問題Q&A

    大阪弁護士協同組合から、表記書籍を出版しました。 私を含む大阪弁護士会公害対策環境保全委員会の有志が分担して執筆したものと、名古屋の後藤徹一級建築士執筆の原稿をあわせて、住環境問題に携わる方のための入門書を目指しました。 関心のある方は下記リンクをご参照下さい。 ※建築・開発と住環境問題Q&A(部分執筆) 大阪弁護士協同組合         3,000円

  • litigatorという存在について

    唐突ですが、Ally Mcbeal ってご存じですか。アリーマイラブといえばわかる方もいるかもしれません。ボストンの法律事務所で働く女性弁護士を主人公にしたアメリカFOXのTVドラマシリーズです。 一時期気に入ってDVDまで買って見ていました。 その中で、何話だったか忘れましたが、主人公の女性弁護士アリーが、「I’m a litigator」と叫ぶ場面があります。litigator とは、とある辞書によれば「a lawyer skilled in arguing in court.」だそうです。 一方、litigatorに対しては、ある種ネガティブな固定イメージがあるようで、例えば、このようなワニ・は虫類のイメージがよく見られます。The world’s most dangerous reptile… reptile には「は虫類」の意味のほかに「卑劣」という意味もあるようで、..gator が aligator の韻を踏んで、litigatorに対する揶揄的表現になっています。 しかし、私は自分がlitigatorであることに誇りを持っています。litigationはあらゆる知覚記憶表現叙述の技能を駆使する非常に高度な作業だと思います。弁護士からの依頼しか受けず、法廷でしか戦わない弁護士専門の弁護士になりたいとすら考えたことがあります。 利益が対立し合う当事者が着地点を見つけるためには、訴訟は非常に合理的な手段の一つです。最近ではADR(Alternative Dispute Resolution)といって、訴訟外で、相互に譲り合って、早く解決しようという流れもありますが、これは条件によっては、「弱い者があきらめ、強い者が無理を通す(ここでいう強い・弱いは非常に多くの要素をもつ概念として使っていますので、一般にいう「弱者・強者」と必ずしも同じ意味ではありません)」構図になってしまいかねない問題があるように感じています。 私は、これからもlitigatorの誇りをもって仕事をしていきたいと思います。

  • 月の土地販売について雑感 補足

     以前から,月の土地問題は,閲覧回数の多い記事なのですが,イベントがらみのプレゼント需要に関連してか,最近再び上昇しているので,補足情報を入れておきます。 1 基本の基 1-1 所有 「所有」(大きくいえば財産権)制度は,地球の中でも国によっていろいろと制度が違っていて,動産にしろ不動産にしろ,だれが,どうやったらそれに関する権利を取得できるのか,また,二重所有権のトラブルはどのように解決するのか,という諸問題は,それぞれの国の民事法によって,細かい取り決めがされています。  要するに,「所有」という概念は,そのような所有権を守るための法制度(ルール)のない所にはあり得ないわけです。 1-2 領有 国がある一定の地域に対して,自国法の適用を主張して現実に占有した場合,それを他の国が認めてくれれば,「領土」となります。  隣接国がそれに反対すれば「領土問題」が起きます。我が国でも過去のいろいろな経緯から,多くの領土問題が起きています(領海についてはさらに状況が複雑なので,ここでの記述は,領土の点に絞ります)。  前記1の通り,「所有」のあり方は法制度によるので,日本国領土については,日本国法に従って,日本国民が所有できます。  外国に関しては,その外国のそれぞれの法に従って,人や法人が所有できるかできないか決められます。 1-3 まとめ・出発点  ここまでに書いたことが基本です。  それでは地球外の土地についてはどうなのか・・・というのが「月の土地問題」の発端になります。  この点については,宇宙条約や月協定(Agreement Governing the Activities of States on the Moon and Other Celestial Bodies)があり…という話が言われているわけで,基本的には宇宙条約の批准国(United Nations Office for Outer Space Affairsによると195カ国だそうで,アメリカ合衆国・日本も含まれています)に関しては,この条約が生きている限り,地球外天体に領有権を主張することはありません。  いずれにしろ,宇宙条約下では,日本が月の領有権を主張しないので,日本国民としては,日本の法律による所有権としての月土地所有権を保護されることはないわけです。 2 ネット上に見るいろいろな誤解 2-1 法律の適用範囲について  基本の基でも書きましたが,「所有権」は法律制度上の概念なので,一定のルールを考察する場合は,そのルールの適用範囲の要素(場所,人,時期・期間,対象物など)を確定したうえで,議論することが必要です。このことはまず押さえておきましょう。この原則が分かっていれば,この問題についての認識をもっと深めることができると思います。 2-2 無主物先占について  法律用語でいうと,無主物先占は日本国民法239条1項で,「日本国領土内」に適用される「動産」に関する規定です。  つまり,月の土地問題(日本国領土外)でこの概念が出てくる余地はありません。ちなみに所有者がない不動産(海底が自然に隆起して出来た土地・・・そのほかの例ってどんなのありますかねえ・・・)は最初から国のものです(同2項)から,クルージング中に領海内で新しい島を発見して上陸しても,個人的な所有権は認められません。海面の埋立などで土地を作った場合については,公有水面埋立法というルールがあります。日本国外でも,当然に,それぞれの国がそれぞれの内容で所有権を規律する法律制度をもっているわけです。  事実上の先占がやがて所有権へと変化していく例は,たとえばアメリカ合衆国の黎明期や帝国植民地などで歴史的に見られますが,このことと,法律学上の無主物先占とは議論の位置づけが違います。 2-3 登記について  登記をしなければ土地所有権を「対抗」できないとしているのは,「日本」の「不動産」に対する取扱に過ぎないので(民法177条),月の土地問題で、現状ではこの概念は出てきません。また,登記(登録)をしなければそもそも「所有権」を取得しないという制度をもつ国(ドイツなど)もあります。ちなみにアメリカ合衆国の場合は譲渡証書の登録が対抗要件です(アメリカは宇宙条約批准国なので,月の領有権を主張せず,当然ながら月面土地の譲渡証書を登録する制度も設けていません)。 3 現状に対する見解  ネット上で多くの方が述べられているように,現状販売されている「月の土地」は,おそらくそのまま土地所有権に変化していく可能性は限りなくゼロに近いものです。中国版の月面土地販売(月球村事件・2005年)では北京市の工商当局が,投資関係法違反で営業停止・罰金の処分をした例(裁判でも販売業者が敗訴)がありますが,日本語版の某社サイトにも,「月に鉱物資源があれば土地所有者の利益になる」趣旨の記述が見られます。もし準拠法が日本法になるとすれば,おそらく消費者契約法4条1項に抵触して契約取消を主張できることになるでしょう。  単なるファンタジー世界の話として受け止めるのであれば,取消云々のヤボな話はナンセンスということになりますが,かえって,月面を切り売りするという話に「ファンタジー」感をもつような感性は,正直どうよと思います。小ぎれいな紙切れの対価が一私企業の利益としてむなしく消えていくだけならば,むしろそれと同額をWWFやユニセフへ寄付するほうがよほどよいと思います。残念ながら,日本の宇宙開発(JAXA)へ直接寄付することは現状できないようです。

  • 大阪市マンション管理支援機構 イベント案内

    大阪市では、マンションの管理組合向けに支援機構を設けています。 いろいろな有用なイベントが開催されています。 最近の案内パンフを掲載します。  パンフレットPDFへのリンク

  • 管理費滞納者に理事の資格を認めないことは適法か?

    まず結論から。 違法・適法の問題ではないので,集会や理事会で議論して自由に決めてください。その意味では,管理費滞納者に理事資格を認めないことは法律上可能です。 <以下結論に至る考察> いわゆる分譲マンションオーナーの権利を区分所有権という。 「建物の区分所有等に関する法律」が,区分所有権を規律している。 区分所有者は共有部分や一棟の建物の管理のために,「管理費」や「修繕積立金」などを支払っている場合が多い。 裁判例では,この管理費等の滞納が,同法第6条の「区分所有者の共同の利益に反する行為」となることが認められているが,仮にそのような行為に該当するとしても,管理費滞納は「支払わない」という消極的行為なので,たとえば,共有部分を勝手に取り壊して増改築したりするような積極的行為とは若干性質が異なると考えられる。 一般には,1~2回分の管理費の滞納だけで,直ちに「障害が著しい」とまでは言えないであろうから,競売請求(同法59条)が認められるのは比較的悪質な場合である(なお,管理費滞納を理由とする専有部分の使用禁止請求を認めなかった事例として,大阪高等裁判所平成14年5月16日判決平成13年(ネ)第3322号参照)。 法律上,区分所有権に対する権利制限は57条以下の「義務違反者に対する措置」の限度でしか許されず,それ以外に,たとえば「管理費を滞納した場合には,電気・ガス・水道の供給を滞納解消まで一時停止する」などの措置を総会決議や管理規約で定めることはできない。法30条が「法律に定めるもののほか,規約で定めることができる」としているのは,そのような意味であると反対解釈されている。  余談だが,弁護士会の機関誌に「自由と正義」という月刊誌があり,その末尾ページに懲戒の公告欄(弁護士の人気ナンバーワン記事?)がある。そこで,懲戒事案として,マンションの管理規約中の「管理費滞納の場合は,共有部分の使用を禁止し,電気・ガス等のライフラインを切断できる」との条項に基づいて,うかつにも電気・ガスの配線切断に立ちあってしまった弁護士の(かわいそうな?)事案が掲載されていた。みんなで決めたから…とか管理規約に書いてあるから…といって,そのまま鵜呑みにしてはならないという教訓である。  では,管理費滞納者に対して,管理者あるいは管理組合理事長やその一部門の役員の資格を認めないとする管理規約や理事会内部での申し合わせは法律に違反しないのだろうか。 これについては,違法・適法二つの考え方があり得る。 違法説の根拠は,管理費滞納者の権利制限は法に定める限度でのみ許されるところ,前記の通り義務違反者に対する措置の内容は極めて限定的なので,それ以外の種類の制約は一切認められないとする考え方による。 他方,適法説は,管理者資格あるいは理事の資格について法律はなんら規定していないから,資格制限は原則として当該団体の自由であるとの考え方による。  少々切り口を変えて,私的団体の理事の被選任権内容に司法的判断が及ぶのかどうかという議論の建て方をすると,いわゆる「部分社会の法理」の問題になる。 この点,最高裁判例は,「司法裁判権が、憲法又は他の法律によつてその権限に属するものとされているものの外、一切の法律上の争訟に及ぶことは、裁判所法三条の明定するところであるが、ここに一切の法律上の争訟とはあらゆる法律上の係争という意味ではない。一口に法律上の係争といつても、その範囲は広汎であり、その中には事柄の特質上司法裁判権の対象の外におくを相当とするものがあるのである。けだし、自律的な法規範をもつ社会ないしは団体に在つては、当該規範の実現を内部規律の問題として自治的措置に任せ、必ずしも、裁判にまつを適当としないものがあるからである。本件における出席停止の如き懲罰はまさにそれに該当するものと解するを相当とする。(尤も昭和三五年三月九日大法廷判決―民集一四巻三号三五五頁以下―は議員の除名処分を司法裁判の権限内の事項としているが、右は議員の除名処分の如きは、議員の身分の喪失に関する重大事項で、単なる内部規律の問題に止らないからであつて、本件における議員の出席停止の如く議員の権利行使の一時的制限に過ぎないものとは自ら趣を異にしているのである。従つて、前者を司法裁判権に服させても、後者については別途に考慮し、これを司法裁判権の対象から除き、当該自治団体の自治的措置に委ねるを適当とするのである。)(昭和35年10月19日最高裁判所大法廷判決昭和34年(オ)第10号懲罰決議等取消請求事件)」としており,その後の政党内部の処分に関する昭和63年12月20日最高裁判所第3小法廷判決昭和60年(オ)第4号家屋明渡等請求事件で「政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばないというべきであり、他方、右処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、右処分の当否は、当該政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限り右規範に照らし、右規範を有しないときは条理に基づき、適正な手続に則ってされたか否かによって決すべきであり、その審理も右の点に限られるものといわなければならない」としている。 要するに,①一般市民としての権利侵害でない内部問題については,完全に自治に委ねられており,国法上適法かどうかの判断はされない。②仮に一般市民としての権利侵害であっても,まずは内部規範を参照し,その規範が公序良俗に反しないかどうかを確認し,規範が合法であれば規範による。③規範が無効・不存在であれば条理(ここでは,わかりやすくするため「一般常識」と言い換えておく)に基づいて,適正手続が取られていたかどうかを判断する。という論理流れになる。  この考え方に基づいて,管理者や理事の被選任資格に「管理費滞納者でないこと」を定める内部規約を再考してみると,管理者や理事の資格についてはなんら法律上の規律があるわけではないので,その内容は当該団体内部で自由に定めればよいということになる。もし当該資格制限の事由が,「外国人であること」「女性であること」だったりすると,直接に一般市民としての権利侵害(平等原則違反)の問題となってくるが,「管理費滞納者であること」というのは,純然たる内部問題にすぎないので,当該資格制限が適法か否かを問題にする余地がないことになろう。  この考察からすると,タイトルの質問に対しては,「違法・適法の問題ではないので,集会や理事会で議論して自由に決めてください。その意味では,管理費滞納者に理事資格を認めないことも法律上可能です。」ということになる。