商標や意匠は、身近にあふれている一方で、その法的意味や、会社実務への影響の理解が不十分であるために、危険な塀の上を綱渡りで歩いているような中小企業・個人事業も案外散見されます。
例えば、長年研究を重ねた画期的なデザイン・機能をもつ照明器具を開発し、大々的に売り出したいという場合、もし、ライバル社へ情報が漏れて、自社製品と見分けがつかないような類似品が発売されてしまったら、研究開発費用を回収出来ず、販売戦略にも大きな支障が生じてしまいます。また、運良く競業他社をしのぐ高評価を市場から得ても、後発の類似品・粗悪品が似たような名称・デザインで発売されてしまうと、自社の売り上げばかりか、製品の信用まで落ちてしまうことになりかねません。
そのような事態を防止し、意匠(独創的なデザイン)や、商標(商品を特徴付ける呼称やマーク)に伴う信用を保護するための法律(知的所有権に関連する諸法)があります。
おおまかにいうと、
意匠とは、工業製品のデザインのことで、形状や色彩の組み合わせが他のものと違う特徴的な独創性をもつものを登録意匠として保護します。
商標とは、製品やサービスにつける目印(マーク)のことで、文字や図形の組み合わせが特徴的で他と区別できるものを登録商標として保護します。
意匠や商標の登録を管理しているのは、特許庁という国の行政機関です。早口言葉にある東京都特許許可局は実在しません。
意匠や商標は類似のものを登録できない仕組みになっていて、データベースで検索出来ます。
最初に挙げた新製品発売前の準備として、これらの意匠や商標を調査し、重複・類似していないかどうかを確認し、登録がうまくいくように支援する業務は、「弁理士」という国家資格者の仕事として、「特許事務所」で取り扱われています。もし、それらの調査をしないまま、登録済みの意匠・商標にかぶってしまうと、積極的な悪意がなくても権利者から販売の差止請求や、損害賠償請求をされてしまう危険があるので、自社が持っている特徴的な独創性ある商標・意匠は(それほど安くはない費用は掛かりますが)登録申請をしておくのがベターといえます。
商標は、通用範囲が広くなるほど信用が増える性質があるので、10年の期間ごとに何度でも更新出来ます。
他方、意匠は、一定の形態を保護するもので、それが長期間になってしまうと、創作を阻害する性質があるので、登録から20年に限って保護されます。
商標や意匠を侵害する類似品を製造・輸入・販売等した場合には、権利者から差止請求や損害賠償請求をされる恐れがあります。また、法律上、損害額の推定規定があり、権利者の保護が強化されています。
うっかり権利侵害をしてしまわないように、ブランドやデザインを売りにする商品やサービスを扱う場合には、相応の注意を払う必要があるということです。
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