株式は、株式会社のあらゆる財産価値(資産、負債のほか貸借対照表や損益計算表に乗らない得意先関係や人材などの無形的資産などを含めた総合評価)を一身に集めた存在です。その存在を、投資や取引の対象とするために作られたのが株券であり、株式取引はまさに人間の知恵を集約したシステムです。
最初の株式は、会社設立の際に、出資者が「引き受ける」ことにより誕生します。そのときの引き受け価額が、「出資の額」となり、株式の原始価格となります。それと同時に、出資者の会社債権者に対する責任は、この出資額の範囲に限定されます(会社法104条 有限責任)。この有限責任の仕組は自由主義・資本主義経済の拡大に大きく寄与しました。もし、この有限責任のシステムがなかったら、出資者はその事業に関わったというだけで、会社の債権者からの追求があれば、全財産を持ち出してでも返済しなければならなくなります。これに対して、有限責任ならば、最初の出資分が戻ってこないことだけ覚悟すればよいので、リスクが限定でき、その分いわゆるハイリスクハイリターンの事業にも積極的に関わっていくことが出来ます(残念ながら、日本市場でのリスクテイクを阻害しているのが、会社の代表者を連帯保証人にする制度と、リコースローンと呼ばれる抵当権制度ですが、このことは又後日機会があれば説明します)。
株式は、会社の価値を体現するものであることから、会社が繁盛してその価値が上がってくると、当初の出資額以上でもその株式を買い取りたいという人が出てきます。逆に、会社の価値が下がると、当初の出資額を下回ってでもだれかに株式を譲り渡して資金を取り戻し、別の事業へ振り向けたいという人が出てきます。このような流動性の発生を多くの参加者を集めることによって収拾するのが株式市場です。現代の株式は、会社経営者・投資家の様々な思惑から、非常に複雑な仕組になっていて、どのような場合にどんな内容の株式を発行できるのか、会社法で細かく決められていますが、株式が会社の価値の表現であり(法104条)、それ自体を取引できる(法127条)という点は基本です。
以上のように、株式は本来的には株式市場で自由に取引されることが原則ですが、経営者=株主であるような場合には、同じ経営者・株主仲間や、非経営者株主(外部出資者)との間で、会社の実質的支配権を巡って、争いになることがあります。また、株式には前記のような会社そのものの持分を意味する財産価値がありますので、その相続が発生すると、親子間・兄弟間・遺族と会社経営陣の間などで、いろいろな法律紛争が発生してしまいます。そのため、会社法は、株式の譲渡について、会社の承諾を必要とする旨を定款で定めることを認めています(法107条1項1号)。そのような定めのある会社を「非公開会社」といいます。非公開会社であっても、一定の事情が発生したときに、株主の不利益にならないように、会社がその株式を買い取らなければならない場合があります(法116条)。
かつては株式には「株券」が必須でしたが、現在では、会社の種類を問わず、原則として株券発行不要であり、株券を発行する場合には定款にその旨記載するという仕組に変わりました(法214条)。従来の株券取引ルール(譲渡・質入れするには株券必要とか、名義書換に提示必要など)は、「株券発行会社」に限って適用されることになります。
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