(3)新規取引先への依頼・権限の確認
新しい取引先の開拓にあたっても、紛争予防のために交渉経過の文書化が重要です。
まず、連絡文書の宛先から注意を払いましょう。基本的には、その取引について、「権限」を持つ人物と、直接やり取りをすることが原則です。
そうでないと、後になって、上司や社長が出てきて、「そんな話は聞いていない」「承諾した覚えがない」「部下が勝手にやった」などの言い訳を招きます。
少なくとも、交渉の核心部分に迫り、重要な決定をする時点では、きちんと相手方の権限を確かめる必要があります。
当方も、文書発出の責任の所在を必ず明記するようにして、相手方に対して、社内的にどのレベルの人物が話をしているかを、知らせる必要があります。
初めから決裁権者を表に出す必要はありませんが、決定権限のない担当者レベルでの文書であれば、そのことを文書上でも明示すべきです。
社員の作成する文書に、勝手に「社長」「部長」等の決済権限ある役職を意味する肩書を使わせないようにしましょう。
(4)取引条件の確認
契約は、勧誘>申込>承諾>成立>効果発生>履行 の順序で進んでいきます。
相手に資料や見積もりを要求する場合には、それが「注文(申込)」でないことが分かるように明示すべきです。
もし、相手に「申込」だと誤解させてしまうと、それに対する「承諾」があったとして、契約の成立を主張される危険性があります。
表現としては、「申込・発注については弊社検討の後、改めてご連絡致します。」などとするとよいでしょう。
また、契約前の資料提供は、ほとんどの場合無料での提供になるとは思いますが、業界慣行や会社の方針などで、有償提供する場合もあり得ますので、事前情報の提供が有償か無償か、どの範囲まで無償か等についてもあらかじめ確認しておくほうがよいでしょう。
(5)信用調査
一定の情報(商業登記・不動産登記、有価証券報告、経営監査報告、経営者情報等)は、有料・無料の別はありますが、比較的簡易に取得できます。
最近はWeb上に会社情報を公開している企業も増えています。ただし、第三者の審査を経ていない資料は、一般に信用性が低いので、評価は慎重にすべきです。
審査を経ていても、絶対に虚偽・誇張が含まれていないとまでは確定できませんので、いずれにしろ、一定のリスクは背負わざるを得ません。
取引の立場上、自社側が強い立ち位置にある場合には、相手が取引をしたいという欲求が強いうちに、積極的に財務情報等の資料提出を求めておくのも効果的でしょう。
その場合には、会計書類(貸借対照表、損益計算書)、税務申告書写し、直近決算期の試算表、所有不動産の全部事項証明などが対象として考えられます。
個人であれば、確定申告書控えや住民票記載事項証明、資産・負債一覧などが追加で考えられます。
逆に、自社側が弱い立ち位置にあるときは、あまり強気の資料提供を求めると、相手社から取引拒絶される可能性が高まります。
そのあたりは、営業利益と危険損失のバランスをよく考える必要があるでしょう。
Leave a Reply