Category: 親族相続
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婚姻費用・養育費計算シート FACECALCU マクロ版リリースv1.10
このたび、婚姻費用・養育費の計算シートマクロ版を作成しました。平成30年司法研究の手法で算出した統計数値をそのまま利用する計算システムです(最初に公開したバージョンには循環参照が残っていたので、バグ修正した最新版V1.10を再度ダウンロードしてください)。 平成30年司法研究に基づく令和元年版の算定表に対応しています。算出の過程はそのまま平成30年司法研究の考え方を使っているので、日弁連提案のような裁判所とは大きく異なる計算根拠によるものではなく、標準算定表ではあいまいな数値であるところを、統計数値により幅のない数値として算出することが可能である点で、算定表の欠点を補完しうるものと考えます。算定表に記載のない多子・再婚ケースや、双方に監護子があるケースなど、シートに当てはめて簡単に結果を算出できるのも利点です。 なお、参考として、日弁連提言方式による計算も可能となっています(が、実務では残念ながら使う機会はないでしょう)。 主に、相談を受ける立場にある方向けに制作しているため、それ以外の方は専門家のアドバイスのもとに使用してください。 このシートを作成するにあたり、平成30年司法研究による家計調査統計の評価を可能な限り追試し、家計調査に関しては、過去5年間の平均値を平成30年~平成26年の間で再計算して、同研究との差異の有無を確認しました。 評価済みデータは こちら からダウンロード可能です。 裁判所の準拠する令和元年標準算定表を実務で使用するにあたっては、以下に述べるような問題点に注意しておくべきと考えます。 【当職見解】 基礎収入の算定について ・公租公課:税法は改正により変動するので、請求時における最新の情報を使う相当性がある。 ・職業費:統計による推計値は評価期間の違いで、最大2%程度の変動幅がある。過去5年の平均値を使用することが適切かどうか(より直近の数値を反映するほうがよいか、または給付が長期にわたることを考慮してもっと長い期間をとるべきか等)、また、世帯中有業者割合で調整する職業費が被服等、通信費、印刷図書費のみでよいか、などの問題があり、平成30年司法研究の数値を使用することの合理性は積極的には説明できない。 ・特別経費:職業費に準じ、保険料の扱いが妥当かなどの問題があり、平成30年司法研究どおりの数値を使用することの合理性は積極的には説明できない。 ・100万円未満の所得者については、どの統計情報をどのように使ったのか、詳細の説明が記載されていないので、正確な追試ができない(p23脚注30)。 ・統計値を使った標準的な計算式を提示できるのに、紙ベースでの利便にこだわり、最終的な提案内容は、収入階層10段階として自然数で基礎収入割合を設定したうえ、1-2万円の幅を設けるというあいまいな表現になっている(p35資料3参照 注:実務上、このようなあいまいさは、事案に応じた妥当な解決などというきれいごとでは収まらず、現実的には、当事者の一方が下限を、もう一方が上限を主張して譲らず、数理上の根拠が不明確な両者の中間値で双方が調停委員から合意を求められるという不都合を生じる)。さらに、公租公課・職業費・特別経費のデータは収入階層を軸とした線形でなく、その合算は、上記資料3表に示された数値からも、かなり乖離しており、上記資料3表の数値選択は、非常に恣意的で、統計による分析結果をほとんど反映していない内容になってしまっている。 生活費指数の設定について 簡易迅速、予測可能性、法的安定性を重視して2区分とした旨説明されている。しかし、このいずれの理由も、合理的とは解されない。すなわち、簡易迅速は本作のような自動計算機を作れば済む。また、複雑と言われている日弁連案でも、年齢と世帯人数という固定的なパラメーターの変化に応じるだけであり、給付条項を工夫すれば予測可能性は害されないし、法的安定性も図り得る。 なお、平成30年司法研究が生活保護基準により平均値を算定した作業についても、方法がわからず追試不能であるが、今後生活保護基準が大きく改善されうる見通しもないので、当面は本研究の示した数値を使用するのが相当であろう。
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婚姻費用・養育費計算シート FACECALCU ライブラリ公開
婚姻費用・養育費計算シート FACECALCU ver 1.00 Family And Child Economical support CALCUlator ふぇいすかるく このワークシートは婚姻費用・養育費の計算式・結果表示による、相談・調停等における当事者の意思決定支援を目標に開発されています。 裁判所で使われている平成30年司法研究の基準と、日弁連提案の基準で算出できます。日弁連提案の算定方法において、基礎データに独自の計算式を使っているので、他の計算機とは若干結果が違っています 算定表にはない再婚ケースや、再婚後にあらたに子どもができたケースなども一発で計算できます。 主に、相談を受ける立場にある方向けに制作しているため、それ以外の方は専門家のアドバイスのもとに使用してください。 表示される結果はあくまでも目安とお考え下さい。 ご意見、ご要望はライブラリページへのコメントでお願いいたします。
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社長・取締役・支店長・支配人・使用人・従業員・社員・株主・・・
会社は多くの人材によって支えられます。それぞれにいろいろな呼び名がありますが、一般の用語と会社法・商法での用語と違うことがあります。 タイトルの用語のうち、会社法・商法で使われる法律用語は、「取締役」「支配人」「使用人」「社員」「株主」です。 社長は「代表権を有する取締役」に付されることのある名称(会社法354条)です。 支店長は多くの場合「支配人(同法10条 会社に代わって事業に関する一切の権限を持つ)」ですが、「使用人(同法11条2項 包括的な決裁権を持たない従業員)」に過ぎない場合もあり得ます。 一般用語では、「社員」といえば「従業員」のことですが、法律用語では「社員」は「社団法人の構成員」を意味し、従業員は「使用人」とほぼ同じです。株式会社の「社員(法律用語)」を「株主」と言います。 「支配人」は一般用語では、ホテルや旅館の筆頭責任者のイメージですが、法律用語では、一定の本店・支店範囲で業務上の専決権を持っている者のことをいいます。支配人は、裁判上の権限をもっている(会社法11条1項)ので、貸金業者が自社の関与する裁判を担当させるために、業務上の専決権を持たない名目上の「支配人」を大量に登記(会社法918条)して、裁判業務に専属させていることが問題になっています。 法律に定めのない職制は、社内で自由に設計することができますが、取締役や支配人は法律に権限の定めがありますので、そのような役職名の使用には一定の制約があります。 ところで、大災害が起こると、普段では考えられないことが起こり得ます。 人材の観点からいうと、株式会社における取締役・株主の地位は、他の立場とは違って、特殊な意味を持ちますので、その喪失のパターンを以下に示しておきます。 まず、代表取締役が亡くなった場合、残った役員のうちのだれかが仮代表を務めるか、新たな代表を選ぶかする必要があります。 社長以下役員全員が亡くなった場合には、株主総会で新たな取締役選任をする必要があります。時効中断のために訴訟を起こす必要など時間的に切迫した状況があれば、裁判所への申し立てにより、特別代理人や仮代表者を選任する仕組もあります。 株主全員が亡くなった場合でも、その相続人がいれば相続放棄をしない限り、株式が相続されます。突然会社が消滅することはありません。 株主全員と、その相続人全員が亡くなり、特別縁故者(家庭裁判所が許可をすれば、相続人との個人的な縁が深かった人へ、その人の持つ財産(株式に限らず、全財産やその一部)が承継される)もいない場合には、その株式は国有になります。 相続財産管理人が選任されれば、なんらかの方法で換価して、国庫に金銭を納付しますが、相続財産管理がなければ、そのまま塩漬けになってしまい、事実上会社が消滅します。
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デジタル情報の保存について
個人が死亡した場合のデジタル遺産承継や、過去の事実立証のための証拠資料としての保存について考えていて、デジタル情報の保存の現状が気になった。調べてみたら、次のようなデータを見つけた。 CA1683 – 光/磁気ディスク、フラッシュメモリの劣化と寿命 / 大島茂樹 ブルーレイへの言及はないが、ほかの資料によれば記録層の保護の弱さが問題視されているようだ。 ちなみに、一般ユーザーにとって、デジタルデータの場合には、媒体の寿命よりも読み取り機器の寿命のほうが先に来ることのほうが影響は大きい。人間の目が読み取り機器である非デジタルデータにしても、現状よく使われている木質パルプ紙は劣化しやすく、比較的長期保存性があるマイクロフィルムでも1000年は持たないらしい。 もしも、1000年後の発見を目的とする文書であれば、「上質な和紙に墨書き」というのがもっとも適した記録手段だろう。石碑という最終手段もあるが・・・。 弁護士業務上必要な範囲では、従来、せいぜい10年から20年の保存ができればよかった。しかし、最近のアスベスト問題関連の訴訟や、今後想定されるニューテクノロジー関連の健康被害事件の訴訟では、数十年前の資料が必要になったりするので、情報の長期保存は、重要な問題である。 デジタルデータは改変の痕跡を残さないことが可能という問題もあるが、これはなんらかの外部的な認証方法を加えざるを得ないだろう。 当面は、既存情報はこまめに、信頼性のあるメディアに固定しておくことが現状での現実的対処かもしれない。
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親権をとるにはどうすればいいか
これもよく聞かれる質問です。 まず、基本的なこととして、親権というのはある種、権利ではなく子どもを育てて保護していくという義務の面が強いこと。そして、子どもが未成年者(20歳未満)である間に限られること。この二点は押さえておきましょう。 2011.06.24追加 コメントをいただいておりまして、誠にありがとうございます。 申し訳ありませんが、個別具体的な相談案件については、当職としてコメントをお返し致しかねますので、あしからずご了承下さい。 一般論としていえば、親権者であっても、子どものことを第一に考えて、養育をしなければなりません。 最近、子の利益の優先や、親権停止規定などを盛り込んだ民法改正がなされました。来年4月から施行予定とのことです。 この改正が、実務の中でうまく活用されるとよいですね。
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親子・兄弟の縁を切るにはどうすればよいですか
親子兄弟との縁を切りたい。非常に良くある法律相談ですが、回答としては「法的には不可能」です。 まず、養子縁組により血縁関係に入った場合は、離縁すればよいので、問題ありません。 しかし、生まれながらの血縁関係については、その血縁関係を切断・清算する手段は法律上、なんら用意されていません。むしろ「直系血族(親子孫)および兄弟姉妹は相互扶養義務を負う(民法877条)」として、法的にはお互いの面倒を見る義務まで課されています。 縁を切りたいという希望をかなえるには、住所・電話番号その他あらゆる個人情報を出来る限り秘密にしておくことです。 たとえば、住民票を移さないままに他所へ転居すれば、住民票による追跡が不可能になります。ただし、これには住民票が必要となる行政上のサービスがほとんど受けられなくなることや、移転届出義務違反による過料の制裁があるという大きな不利益を伴いますから、お薦めできません。 なお、現実に面会を強要されたり、意に添わない仕打ちを受けたり、付きまとわれたりする場合には、裁判上の処分により「面談禁止・架電禁止の仮処分」の決定を取ることで、ある程度被害防止を図ることは可能です。 これは、「自宅等の立ち寄り先や自己の所在地から半径何メートル以内に立ち入ってはならない」とか「電話をかけてはならない」、「面談を強要してはならない」などという個別の禁止条項を裁判所に決めてもらい、相手に通知するやり方です。もし相手がその条件を守らない場合には、例えば、1回の違反行為につき10万円の違約金を請求するという条項(間接強制といいます)をプラスすることもあります。 仮処分の具体的な進め方等については、専門的な知識経験を要しますので、弁護士会から紹介を受けた弁護士にご相談されることをお勧めいたします。 補足 2011/10/11 こんなコメントをいただきました。 私は、中学2年生です。 法律上親子の縁が切れないのは 分かりましたが、 養子縁組を組めば、 今の親とは縁を切れるのでしょうか? 結論からもうしますと、養子縁組をしても、元の親との縁は切れません。養子縁組をした人の戸籍を見たらわかりやすいのですが、戸籍には元の親(実親)が記載されており、扶養義務や相続権など、親族関係の定めは養親とともに適用されます。 例外的に、「特別養子」という制度があり、夫婦で6歳未満の子どもを養子にとる場合に、家庭裁判所の許可により、元の親との関係を法的に切ってしまうことが可能です。特別養子の場合には、扶養義務や相続権などは養親との間にだけしか発生しません。 補足2 2023/08/01 別のコメントをいただきました。 18歳です。現在、両親が離婚し母の戸籍に入っている状態です。父の戸籍に入れば母との縁を切ることは可能でしょうか? 結論としては、父方の戸籍に入っても、母(親)と子の縁を法的に切ることは不可能です。 どちらの戸籍に入るかは、現行制度上では単に姓(氏)の統一の意味だけしかありません。 単に母の戸籍から抜けたいだけならば、役所に「分籍届」を提出することで、自分ひとりだけの新戸籍が作れます。 父方戸籍に入りたい場合は、家庭裁判所で父方の氏への変更許可を受けたあと、役所に「入籍届」を提出すればよいです。 *ご相談メールありがとうございます。 上記の回答で不明の点がございましたら気兼ねなくお問い合わせください。 なお、メールでの返答は致しませんので、あしからずご了承ください。 親族問題参考文献リスト