カテゴリー: 債務問題

  • 司法書士の過払金請求広告について

     最近電車の中で,司法書士さんの「過払金請求できます」という広告をたいへんよく見かけます。これで多重債務を負った方々が救われれば,なにもいうことはないのですが,司法書士さんのなかには,過払いのある債権者だけを整理対象として,それ以外の債務については,手をつけないという処理方法をとる方も居ると聞きます。弁護士にもいるのかもしれませんが。。。

     本来,過払金請求というのは,多くの債権者と長年にわたって貸し借りを続けているなかで,債権者毎に生じてしまう不平等(ある事業者は過払いを利益とし,別の事業者は過払い分の弁済のために貸金が残ったままになること)を,一般債権者平等原則にたって,債務者側で任意に調整するところに意味があります。つまり,「払いすぎたものを取り戻す」という単純な話ではなく,あくまでも,「債務整理」という全体構想のなかに位置づけで考えなければならないものです。
     ところが,過払請求だけしか引き受けない司法書士・弁護士は,債務全体を見て債務者の再生を考えるという作業をしないため,過払いは回収したものの,そのほかの債務が残っていて,結局家計が再び行き詰まってしまうという方が出てきているようです。このようなことがないように,債務問題を引き受ける場合には,必ず,どのような出口(破産,民事再生,任意整理など)に向かうのかを予測したうえで,必要な準備をしていくことが必要です。

     士業に携わる者には「武士は食わねど高楊枝」という意地が本来備わっているはずです。有資格者が増えて,競争も激しくなりつつあるこの時勢で,難しいことではありますが,「貧すれば鈍する」とならないように,「士」たるもの,心して法曹としての誇りをもって仕事をしていきたいものです。

  • 貸金業:金利引下法案の混迷

    元凶は金融庁の弱腰にある。

    いったいどこの貸金業者が頼んだかとおもうほど,(事業者・消費者双方から見て)使い物にならない「例外規定」や,経過規定というには長すぎる9年間もの特例措置。

    また,利息制限法の区分変更で,ほとんどの少額借入の上限利息は,改正前に比べて逆に「上がる」という「改悪」である。

    高金利による安易な貸し出しが消費者の家計を破綻させ,ひいては人生を破綻させ,自殺に追い込まれる者数知れず,さらには,死ねば死亡保険金が貸金業者の手に入るという,これまでの惨状を知っての法案であれば,あまりにもひどい。

    営業店舗の違法取り立てをいくら取り締まっても,元栓が緩いのだから,それだけではダメである。また,この問題について,貸金業者の意図を受けて,金融庁へ圧力をかけている国会議員も,それが真に国民一般の利益にかなうと考えているのであれば,正々堂々と表に出てきて議論されればよい。

    こんなことでは,後藤田正純衆院議員が怒るのも無理はない。同議員にはぜひ国会で筋を通して頑張って頂きたいと思う。

    大阪弁護士会では,この金利問題について,来る国会へ向けて,署名活動を行っています。大阪ではすでに1万人近くの署名が集まっていますが,健全な法改正の実現に至るには,まだまだ世論の声が少ないので,是非とも署名運動にご協力ください

  • 最近腹の立つこと 消費者金融

     債務整理をする際に,長期の取引があると過払金を回収しなければならない。
     これは,①貸金業の規制等に関する法律利息制限法とで,利息の上限が違っていること,そして,②貸金業者の大半が,貸金業規制法を守っていないために,合法的に利息を収受できないこと(この点はあまり注目されていないが,まさにそのとおり。彼らは端的に違法営業をしている)の二つの問題から発生してくる奇妙な現象である。

     私が腹立たしいのは,この過払金返還について,消費者金融の特定の会社の態度が悪いという点である。大手でいうと,とくに対応がひどいのは,CFJアコムレイク(GEコンシューマクレジット)

     中小はもっとひどいが,それにしても,CMで「ちゃーんとアコム」とか,「話せるDIC」とか,「いつでも返せるレイク」とか言っているのだったら,法律に従って,過払金も「ちゃーんと」「話せば」「いつでも」返してくれたらいいのに,取引履歴を開示しない内容証明を送っても反応がない電話をすれば担当が変わっただの,前の担当から引き継いでいないだの,多重債務者の言い訳も真っ青の,厚顔無恥な対応をしているのが,彼らだ。

     比較的マシなのは,アイフル武富士だが,いずれもかつてひどく叩かれた過去を持つので,神妙にしているのだろう。社会的制裁は,ときに有効なのだと理解できる。
     それにしても,債務整理では,「びた一文負けない(従って,示談なら一括7割払えるのに,手間のかかる民事再生をやるハメになって,債務者には時間・費用(1年・30万円)がかかって,法定の最低配当(2割)長期分割(3年)返済計画になり,結果的には債務者にも債権者にもメリットがない)」という頭の固い対応に終始するくせに,過払い返還となると,とたんに「負けてくれ,7割で示談してくれ」とくる。ほんとうに,消費者金融業界のコンプライアンスとは,いったい何者なのだ。普段滅多に怒ることがない温厚な(?)私だが,最近の彼らには心から腹立たしい

     最近話題の金利引下げ問題で,消費者金融業界が激震を被っている事情はよくわかる。過払い返還なんて,自分が貸金業者の立場だったら正直言って「冗談だろ」と思ってしまう奇怪なシロモノだ。しかし,業界の実体が上のようなコンプライアンスとはほど遠いものである限り,まったく同情する気になれないのが実情の一端を知る弁護士としての率直な意見である。

     消費者金融は武富士アイフルを入れて上位5社くらいが残ってくれたら,あとは滅んでも大きな混乱はないだろう。本当の意味でしっかりとしたコンプライアンスを保つことのできる業者だけが消費者金融の利益を得られるような健全な業界になってほしい。
     そもそも年利20%を超える利息でも借りる需要は,到底正常な経済観念の持ち主のものではない。なぜなら,年利2割での借金は,借金額の2割相当の減収を意味するからだ。
     もし年収600万円世帯が恒常的に300万円の借金を抱えて年利2割の利子を払っていたら,その年の年収は1割も減る計算になる。そうやって,次第に実質収入が目減りして,ちょっとした誤算で最後には経済的に破綻してしまうのだ。

     年2割のパフォーマンスを持つ投資がある一方で,年2割の減収となる借財がある。金銭の世界では,豊かな者ほど財を増やし,貧しい者ほど財を減らす。そのこと自体はことさら非難すべきものとは思わない。それもまた一つの社会のあり方だろう。
     しかし,そうであればこそ,なぜ,貧しい者が財を減らしてまで借金しなければならないのか,破綻に至ること必至の貸金需要とはいったい何者なのか,そういったことを問わずして,ハイリスク層の需要があることを高金利維持の根拠とする論調には同調しがたい。

    日弁連,大阪弁護士会では,金利引下げの署名活動をしている。

    ぜひご協力願いたい。

    URLはこちら
     http://www.osakaben.or.jp/web/03_speak/iken/iken060606.pdf 弁護士会の意見書
     http://homepage2.nifty.com/yamanouchi-katsura/kinrisyomeidaiben.PDF 署名用紙
    (とりあえず,暫定的に私のホームページ上に置いてますが,そのうち弁護士会のほうにも掲載されるでしょう)