以前担当した業務上過失致死事件の国選弁護刑事事件の被告人(加害者)が,受刑者となってある刑務所で服役している。この刑事事件は,放縦な生活をしていた受刑者が,不眠の影響下に自動車を運転して事故を起こし,同乗者らを重傷・死亡させたものだった。
この受刑者から,刑務所での作業賞与金が溜まったので,被害者(故人)へ線香代を送りたいとの手紙が届いた。私は,遺族への取り次ぎを引き受け,後日受刑者から送られてきた1万円札1枚を,受刑者の手紙とともに被害者遺族へ送った。
このようなことは滅多にあることではなく,大半の受刑者は裁判が終われば再び弁護人に接触して被害者に被害賠償をすることはない。有り体にいえば,「逃げてしまう」のである。
被害者遺族からは「受刑者の気持ちは分かった。しかし,彼は刑務所という,世間から隔絶された無菌室にいて,反省する環境が十分に用意されている。だから,彼が出所してからさらに年月が経ってみないと,彼の本当の気持ちは分からない。もし,そのときにもまだ謝罪の気持ちがあったら,そのときは墓前へ参ってほしい。」との返事があった。
最近,民事専門になってきて,刑事弁護事件をほとんど扱っていない。しかし,刑事事件をやっていると,ときどき,こんないいこともある。
さだまさしの「償い」が私の頭の中でリフレインしている。
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