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  • 謹賀新年 2015

    あけましておめでとうございます。

    昨年もいろいろな事件がありましたが、今後も事件は続くでしょう。

    皆様の、ご健康とご多幸を祈念申し上げます。

    私も、世の中の動きに注視し、道を間違えないように、しっかりと歩いて行こうと思います。

  • いわゆる雇い止めと無期転換申込について

     前回は期間を定めない労働契約の場合の企業側からの解消(解雇)について説明しました。
     今回は、期間を定めた「有期契約」の解消(雇止め、更新拒否)についてです。
     「期間工」とか「臨時工」といって、工場などで一定の繁忙期ごとに期間を区切って雇い入れる例が典型ですが、工場でなくても、事務職員や雑役のためのパート・アルバイトの採用に当たって、有期契約で雇い入れれば、社内の呼び名がいわゆる「正社員」であれ、「契約社員」であれ「パート」であれ、すべて同様の問題になります。
     従前、労働基準法では、原則長期3年を超える有期契約は認めていませんが、短期は、必要以上に細切れにならないように求める指針があるだけです。そもそも、長期の拘束が前近代的な奴隷労働につながることを危惧して、長期契約を制限したのですが、現代では、むしろいかにして長期安定雇用を守るかが労使ともに目標課題になっている感があります。

     労働契約法のうち、有期雇用については、平成24年8月に改正があり、平成25年4月1日から有期転換申込の制度が施行されています。
     有期雇用の場合の更新拒否・雇い止めに解雇権濫用法理の適用がないことは改正法のもとでも原則論です。
     例外として無期転換申込が適用される労働者は、期間を定めて雇用し、更新を繰り返して通算5年超雇用されていた労働者です(ただし、大学等の研究者、期間限定専門職、定年後の継続雇用等の例外があります)。
     通算5年の反復更新期間をカウントするスタートは、平成25年4月1日以降に更新された契約の始期です。従って、平成24年12月1日に6か月と定めて短期雇用した人については、平成25年6月1日の更新から5年がカウントされます(平成24年12月1日からではありません)。
     5年を経過してから更新する場合には、労働者のほうから「無期転換の申込」をするかどうかを選択出来ます。事業者が労働者の意思に反して一方的に無期に転換することができるわけではありません。
     たとえば、先ほどの半年契約の労働者の例でいうと、平成25年6月1日から5年を経過するのは平成30年6月1日ですが、同年5月末日終了の契約の始め(平成29年12月1日)から平成30年5月末までの間に、期間の定めのない労働契約に変更するよう、使用者に対して申し込みをすることができます。
     労働者から無期転換申し込みがあったときは、事業者はこれを拒否できません。しかし、期間以外の労働条件(職種、勤務地、賃金、労働時間など)は、従来のままでもよく、変更の要求に応じる義務まではありません(他方、労働者の側からの期間以外の条件変更要求が禁止されているわけでもありません)。
     「通算」5年ですので、途中に空白期間があるときにはそこで中断されて、再雇用のときからカウントを積算します。どの程度の期間が空けば空白とみなされるかは、省令で細かく定義されています。

     雇止め法理と不合理な労働条件の禁止については、厚生労働省作成のパンフレットにも書かれた二つの最高裁判例やその他の裁判例がベースです。改正法の内容も、結局は「社会通念」とか「合理的理由」といった、解釈の幅の広い概念によって規定されていますので、実際の紛争になったときには、ケースバイケースの判断とならざるを得ません。
     なお、労働契約法の改正に伴って、短期雇用者に対して更新条件を通知しなければならなくなったので、労働条件通知書のモデル書式にも変更がありました。

     ちなみに、上記の法律改正にあたっては、労使双方から様々な意見があり、例えば、5年を超えて更新しないこと(1年契約として3年目で雇止めしてしまう例)が常態になってしまって、かえって短期雇用が増えるのではないか、あるいはせっかく5年を超えて契約期間が無期限になっても、正社員並労働条件に変更されないのでは、就業環境の悪化を固定化させてしまうのではないか、等と言われていました。改正法施行から1年以上経過したので、ほとんどの短期雇用者が今後改正法の適用を受ける立場にあろうかと思われます。今後、改正時に懸念された問題が現実になるのかどうか、注意を払う必要があるかもしれません。

     どんなに法律が変わっても、会社が従業員を大事にするかどうかによって、労働環境はまったく違ったものになり、結局は、裁判所で個別の事案事に争われていくという構図には変わりが無いように思います。
     会社と従業員が共存して繁栄していくWinWinの関係が成り立つように、経営者も労働者も立場の違いを理解し合って、事業の発展に勤めて収益を上げていくことが望ましい道筋ではありますが、現実問題としては、これからも難しい課題が存在し続けることは間違いありません。
     少なくとも経営者としては、法律の遵守が最低条件ですから、労働契約関係の法律改正や厚生労働省指針等に十分に留意した労務管理を行うことが必要です。

  • 解雇権濫用法理

     解雇は、使用者側からの、労働契約関係の解約です。

     使用者側からの解雇は、民法ではなく労働契約法労働基準法によって規制されています。前回説明したとおり、解雇予告の制度が適用されるほか、労働契約法16条により「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められていて、これがいわゆる「解雇権濫用法理」という、過去の裁判例の積み重ねによって認められている労働者保護の仕組です。

     以前の記事では、「懲戒権」行使や、「セクハラ・パワハラ」に関する懲戒解雇問題などが関連していますので、ご参照下さい。

     解雇をめぐる裁判例は非常に多く、まさにケースバイケースの判断です。
     おおまかな分類をすると、「整理解雇」については、会社の経営努力を尽くしても人員削減がやむを得ないかどうか、「懲戒解雇」については、当該従業員を解雇しなければ会社の業務継続に重大な支障が生じるかどうか、という視点から判断することになります。

     いずれの場合にも、従業員の意思に反して解雇することは、会社側に法的リスク(後に解雇無効を主張されたり、地位確認の仮処分を起こされて、賃金の仮払いを命じられたりする)を発生させますので、解雇に当たっては、事前のリーガルチェックをお勧めします。

     参考までに、労働者側からの労働契約の解消(退職)について。
     労働者側からの退職は、契約期間の定めがない場合、2週間の予告期間を置けば、民法上ではいつでも(何の理由もなく)出来ます。つまり、特にいつまでという約束をしないで労働者を雇用した場合、2週間後に辞めますと言われると法的にはこれを阻止する手段が原則的にありません。2週間では短すぎて困るという場合は、労働契約か就業規則で退職予告期間を定めておく必要がありますが、あまり長い期間を設けることは労働者に不利なものとして無効になる可能性があります。

     最近では、一部のいわゆるブラック企業(企業自体が違法な行為を事業としていたり、労働条件が劣悪な企業)では、労働者からの退職届を受理せず、退職させないで働かせる、辞めないように威圧する、という事例があるのですが、法的には、意に反する強制労働として違法であり、場合によっては損害賠償請求されるおそれがあります。